マーチング文化が、地域の未来を支える力に——

TETAU

マーチング文化が、地域の未来を支える力に——

「小学生から社会人まで、年齢も経験もバラバラなメンバーがひとつの音と動きでつながっていく。その瞬間が何より好きで、気がつけば何十年もマーチングと共に生きてきました」
マーチングへの温かな想いを話してくださったのは、「Starfish Band Activities」で監督を務める新谷憲史さん。紀南地域で唯一のマーチングバンドです。

「動く総合芸術」とも称されるマーチングバンド。
迫力ある楽器演奏に、行進やフラッグなどの鮮やかな演出が重なり合うステージは、観る人に大きな感動と興奮を与えます。
新谷さんがマーチングバンドに惹かれたきっかけから、その魅力に込める想い、そしてこれからの取り組みについて、温かく、ときに熱くお話しいただきました。

「これが文化なんだ」——その感動が、バンド結成の原点に

大学時代に出会ったドラムコーの世界が好きになりすぎ、本場であるアメリカに渡った新谷さん。
(ドラムコー:金管楽器と打楽器、シンセサイザー、カラーガードによって構成されるマーチングアンサンブル)
チームを支えている組織や、マーチングが文化として根ざしているアメリカの状況に強く惹かれ、心を動かされたそうです。
「アメリカで見たドラムコーの大会は、ショーアップされたファイナル大会も素晴らしかったけれど、いろんな町で行われるローカル大会が素敵でした。
田舎にいてもマーチングのほうがやってきてくれる。『これが文化なんだ』と感動しました」

帰国と共に、スタートアップを決意。
2000年に「Starfish Band Activities」を結成しました。

和歌山って文化が育たない? 

「この辺は文化的なことは育たないから、なかなか続かないと思うよ」
マーチングバンドを立ち上げようとしていた当時、このようなアドバイスを受けたそうです。
たしかに、和歌山県は”マーチング不毛の地”ともいわれ、都市部のようにマーチングに触れられる機会が多いわけではありません。
それでも設立から25年。「やってみたい」という子どもたちや若い世代が、今なお大勢集まってきてくれています。
「彼らのまっすぐな気持ちを、どうにか受け止めたい」そんな想いを抱き、活動してきました。
少子化が進み、音楽やスポーツに出会える場が減っていくなか、子どもたちが“夢中になれる瞬間”をつくり続けることには、大きな意味があります。

「小さな町でも、心が震える経験は生まれます。そのひとつひとつが、子どもたちの未来につながると信じています」
本業が公立小学校の校長先生でもある新谷先生。
子どもたちへ向けたその言葉には、やさしさと強い願いが込められています。
「文化は、続けることで育ちます。だからこそ、この場所で、仲間と、地域と一緒に育てていきたい。そんな想いで活動しています」

この町でマーチング文化を育てたい

「マーチングバンドに興味があるけれど、参加するにはなかなかハードルが高い」
そう感じる方も少なくないかもしれません。

そんな中、ここ上富田で、3年前から新しいムーブメントが始まっています。
その名も「MIX3」(と書いて、「スリークロス」!)
マーチングバンドをより親しみやすく楽しめる交流イベントとして、2021年にスタートし、全国各地で大会が開催されてきました。
スポーツ観戦のように楽しめるイベントとして、小さな子どもから大人まで、誰もが気軽にマーチングに触れ、その魅力を間近で味わうことができます。
また、演者にとっても、小人数から出場でき、JPOPやジブリなど、好きな楽曲を使用し、自由に演出できるのも魅力の一つ。

和歌山では今年で3年目となる今大会。この仕掛け役も、新谷さんでした。
「スリークロスに興味を持ったのは2021年のコロナ期間です。
例年実施していたコンサートが3年間中止になり、メンバーのモチベーションを保つことが難しく、本当にタフな期間でした」

そんなとき、スリークロス大会の動画がSNSに流れてきました。
画面越しに見るプレイヤーの生き生きとした表情、大会の規模感。
「これだ!これなら自分たちにもできる」
そう感じた新谷さん。
既存のスリークロス大会へのエントリーを考えるも、関西ではまだ大会自体が少ないことや、日程的に難しいことが分かってきました。

「だったら自分たちでスリークロスを開催しよう!」
そう決意した新谷さんはすぐに動き出し、2024年には和歌山県で初となるスリークロス大会を開催しました。背中を押したのは、かつてアメリカで目にした光景でした。
「ここ和歌山から、あのアメリカのローカル大会のようなイベントを開き、発信していきたい」
その思いを胸に、現在は上富田での3回目の大会開催に向け、走り始めています。

この町に根付いたマーチング文化は、地域の未来を支える力に

安全でスムーズなイベントを維持していくためには、年々増えていく運営費や、会場費、機材搬入費など、厳しい現実にも向き合わなければなりません。また、より多くの人に携わってもらうには、当日のライブ配信など、新しい試みを取り入れていく必要があります。

「それでも続けたいのは、この場が、子どもたちの成長と笑顔につながっていると実感できるからです」
そう、新谷さんは力強く話してくれました。

「MIX3和歌山オープン」は、2026年の開催に向けてクラウドファンディングを実施しています。
「MIX3は、ただのマーチング大会ではありません。
年齢も経験も所属も関係なく、“マーチングを愛する人が同じフィールドに立てる場所”としてつくってきた、私たちの大切な舞台です。小学生から社会人まで、地域の子どもたちと県外のチームが一緒に音を鳴らし、学び、刺激し合う——そんな光景が、この地域の日々をちょっとだけ明るく、誇らしいものにしてくれています」

皆さんの応援は、地域に根付いたマーチング文化を守り、やがては地域の未来を支える力になります。
「この地域で、こんな挑戦が続いているんだよ」
そんなふうに感じてもらえる場を、ぜひ一緒につくっていただけたら嬉しいです。

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