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紀南Good

故郷のみなべで星空ツアーを実現。「やりたいことで稼ぐ力をつけると友達と誓い合った。」Star Forest

Update 2020年8月11日
みなべ町千里の浜。数ある熊野参詣道のなかで唯一海辺を通るコースの中にある。

和歌山県みなべ町。
紀州南高梅が生まれたことで知られる町にはもうひとつの顔がある。
それは本州最大のウミガメの産卵地という顔だ。

ウミガメが産卵に訪れる千里の浜で、星空ツアーを開催している人がいる。
それがStar Forestの角田夏樹(かくだなつき)さんだ。

角田夏樹さん

ウミガメと星空は一見、関係がないように思えるが、実はとても関係が深い。
星空を見るためには、明かりのない真っ暗な環境が必須になるが、
ウミガメもまた明かりのある場所にはやってこない。

日本の海岸線から明かりのない浜が少なくなる中、ここみなべはウミガメの産卵にも適した、光害のない数少ない浜。
角田さんはこの千里ヶ浜をメインの会場として星空ツアーを行っている。

自身が営む、みなべ町の海岸線近くにある店舗「Star Forest」が星空ツアーの集合場所だ。
倉庫を改造して作ったそこは温かみがありつつ、実用的な作りでなんとも居心地がよく、集合場所だけではもったいない雰囲気。

嬉しいことにコーヒーを飲むこともできる。
ライスミルクを使ったカフェオレは優しい甘さで、ほっとできる。
動物性のものを一切使わないというこだわりが嬉しい。
近くには小目津(こめづ)公園という子ども連れに人気のスポットもあり、立ち寄る店舗として人気が出そうだ。

お米のミルクを使ったライスミルクは優しい味。

ニュージーランドで星空ツアーに関わり始めて、すぐに和歌山でやろうと決意した。

角田さんはここ、みなべ町に生まれた。
子供のころから自然と地域に愛着を持っていた。

はじめてニュージーランドを訪れたのは、卒業旅行。

大学での専門が天文学だったこともあり、現地で星空ツアーに参加した。
そして、そのツアーでちょうどガイドをしていた星空ツアー会社の社長からスカウトを受けたという。
とはいえ、すぐに快諾したわけではなく、「なにかあったらニュージーランドに行こう」というくらいだったと角田さん。

その時は想像しているより早く訪れた。

暮らしたのは「テカポ」という町。
人口は300人ほどの小さな町だが、日本人は30人もいて、日本食のレストランもあった。
大学の天文台があって、日本とニュージーランドが共同で研究していた場所だった。
病院が100km先にしかないような、小さな町。
観光で成り立つ町だった。

ニュージーランドで星空ツアーの仕事をはじめて1ヶ月後には「これは和歌山でもやれるはずだ」と考えるようになっていた。

その小さな町「テカポ」が故郷「みなべ」とリンクした。
みなべの環境もまた人口が減り、街明かりが減っている。観光客もくる。
星空ツアーを行える環境は揃っているのではないか。

ニュージーランドで4年暮らしたのち、みなべに帰ってきて星空ツアーをはじめた。
ウミガメが産卵に来るほど暗く静かなみなべの浜は、やはり星空ツアーを行うにはもってこいの環境だった。

遠い星のことを考える時間は、気持ちがスッと広がるよう

何組かのファミリーとで貸切の星空ツアーを開催。
場所は角田さんの本拠地であるみなべ町、千里の浜。

「ではそろそろはじめます」

静かな口調で星空ツアーが始まった。
先に沈んでしまう西の空から東に向けて解説が進む。

「目で見える遠い星は600光年ほど離れた冬の大三角形の一つ、オリオン座のベテルギウス。 小さく見えるけれど、太陽の1000倍の大きさ。」 「このベテルギウスはすでに超新星爆発しているかもと言われている。 だけど、今日爆発したとしても地球でその爆発したのをみられるのは600年先」。


明るい星をつないでいくと「冬のダイヤモンド」。
それから、北斗七星からの北極星の見つけ方。
・・

星空ツアー
月が明るくて星が見えづらい日だったが、それでもめいっぱい楽しむことができた。

子供の頃に学校で習った微かな記憶がよみがえってくる。
あれがこれか、と今頃になって理解するのが面白い。
実際に外でみるのと教科書で知るのでは大違い。

星の話にはじめて触れる子供たち。
参加前はもしかしたら理解するのが難しいのではないかと思っていたが、星の話は新鮮なようで、想像以上に真剣に話を聞いていた。

この日は月がとても明るく、そのせいで見えている星は少なかったが、
天体望遠鏡でみた月の表面は、写真でみるのとは雲泥の差。
なんだかわくわくして、そわそわして、ぎゅっと固まっていた気持ちが一気にほぐされるような感覚だった。

角田さんの話は穏やかで、質問にも丁寧に答えてくださり、充実した時間を過ごすことができた。
何度も望遠鏡を覗きたがる子供たちにも優しく対応してくれ、子供たちにも大人にも間違いなくかけがえのない体験となった。
秋にもまた星空ツアーを開催するという約束をして、約1時間の星空ツアーを終えた。

子どものころの友達との約束をはたす

角田さんは高校生の頃、同じくみなべで育った友人と、
将来、自分自身のやりたいことで稼いでいける力をつけ、地域で一緒に活動しようと語り合ったそうだ。

星空ツアーを立ち上げた今、角田さんは高校生のころの想いを現実にした。

星空ツアーをはじめようと決意したときには、100人が100人に、「それでやっていけるのか」と言われた。
でも角田さんは全く気にしない様子で笑顔を絶やさないままに言う。
「そう言っている人にもプラスになるようにやっていきたい。そうなればはじめて対話のテーブルにつける」と。

困難がないわけではない。
ただ、高校生の頃、友達と語り合った将来の形が心の中に残っている、と角田さんは言う。

わたしたちの星空を自分たちで守る

角田さんの目下の目標は、みなべを星空保護区にすること。
4年間暮らした「テカポ」は世界初の星空世界遺産になるのではないかといわれており、ダークスカイリザーブ(星空保護区)に認定されてる。

そのテカポと同じように、紀南地域が星空保護区になれば、
世界遺産熊野古道、かつて熊楠が守ってきた自然も守り続けることになる。

2021年夏には、串本町にロケットの発射場の完成も予定されており、さらに紀南の空は注目される。

夜はカーテンを閉める、不要な電気を消す、できるだけ明るさを減らし、自然な状態に近づける。
わたしたちのちょっとした行動だけでも、星空を守ることにつながる。
星空を守るための活動が、自然環境を保護する意識を高めてくれるかもしれない。

まずはその価値を、楽しみにながら感じてもらうために、角田さんは故郷で星空ツアーを続けていく。

StarForestさんの星空ツアーに参加するには

StarForestさんのツアーは、夏季20:00〜と21:30〜、冬季:19:00〜と20:30〜。
事前にwebから申し込みが必要。申し込み方法・料金・その他詳細については下記webサイトから。

SterForest公式ページ
http://starforest.mystrikingly.com/

Star Forestさんの星空ツアーは、「出張」でも開催してくれる。

過去には「南紀白浜空港」での星空ツアーや「熊野古道」での星空ツアーなどを開催しており、
今後も、「座禅と組み合わせたツアー」や「上富田スポーツセンターの広大な敷地を生かした星空ツアー」「狩猟と組み合わせたツアー」なども今後開催予定だとのこと。

どの季節もそれぞれの楽しみがあるが、特に熊野古道と関連した星空は、春の「からす座」。
この「からす座」は太陽神アポロンの使いとして3本足のからすだとされている。
熊野三山のシンボルとなっている八咫烏も太陽の使いで三本足のからす。
古代から、熊野の地と遠く離れたギリシャがつながっていたかもしれないと想像しながら見る空は、いつもとは違う悠久の時間に連れて行ってくれるだろう。

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