服と一緒に心を届けたい——和歌山盲学校の生徒が難民の子どもたちへ
「難民の子どもたちの中にも、視覚障害のある子はいるのだろうか」
和歌山県内で唯一の視覚障害者を対象とする特別支援学校、和歌山県立和歌山盲学校。
ある生徒の問いをきっかけに、同校では難民問題について学び、「見えない・見えにくい自分たちだからこそできる支援」を考える取り組みが始まりました。生徒たちは、服を回収して難民の子どもたちに、心とともに届ける取り組みを展開。この活動が評価され、2025年度『届けよう、服のチカラアワード』において、全国769校の中から優秀賞に選出されました。

ユニクロやGUを展開する株式会社ファーストリテイリングが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とともに進める『届けよう、服のチカラ』プロジェクト。子ども服の回収を通して難民支援や国際理解について学ぶ、学習型の社会貢献活動です。
「目が見えない、見えにくい」という自分たちだからこそできること
「視覚障害という同じ境遇の子どもたちに、自分たちの手で服を届けたい」——。
そんな思いから、この活動は始まりました。
生徒たちは、自分自身が服を選ぶ際、コーディネートに迷うことがあるといいます。色の組み合わせに悩んだときには、店員さんの力を借りることもあります。
視覚障害者にとって、触覚も服の情報を得る大切な手がかりです。多くの場合、服を選ぶ際には手触りや着心地が重視されます。
当事者である自分たちだからこそできる支援の形を考え、生徒たちは創意工夫を重ねながら、さまざまな取り組みを展開しました。
■誰もが使いやすく、認識できる回収BOXの設置
肢体不自由のある子どもでも使いやすいよう、横口付きの回収BOXを作成。さらに、音で回収場所を知らせるテーマソングを制作しました。子どもたちの明るい声が響く、思わず笑顔になるような楽しい音楽です。加えて、見えやすい配色と文字でのぼり旗を作成し、地域の方への発信にも活用しました。
■触覚で色を識別できる布製タグ「いろポチ」の取り付け
先天的な視覚障害者の多くは、色の概念を持っています。視覚障害のある難民の子どもたちにも、自分で色を選び、おしゃれを楽しんでほしい——。そんな願いを込め、生徒たちは一枚ずつアイロンでタグを取り付けました。
※「いろポチ」・・・触って色を識別できる布製タグ。(株式会社フクイの登録商標)
■衣類発送前の洗濯・アイロンがけ
衣服の手触りを大切にする視覚障害者の特性に配慮し、柔軟剤を使用せずに洗濯とアイロンがけを実施しました。視覚支援学校ならではの深い洞察と、「同じ境遇の仲間」への思いやりが込められた活動となりました。
誰一人取り残さない社会の一歩へ
2026年2月12日、東京・国立科学博物館で「“届けよう、服のチカラ”アワード」の表彰式が開催されました。同校高等部2年生の生徒が臨んだプレゼンテーションと質疑応答。
「この行動が、誰一人取り残さない社会への一歩になればうれしいです」
力強く語られたその言葉が、会場に深い印象を残しました。
「誰かに選んでもらう」ではなく、「自分で選べる自由を届けたい」。
他校と比べれば枚数は多くないかもしれません。それでも、回収した227枚すべてに心を込めて送り出された大切な服たち。
見えない、見えにくい誰かに、「服を贈る」から「心を届ける」取り組みへ。
彼らの一歩が、誰一人取り残さない社会の実現へとつながっていくことを、心より願っています。
