アドベンチャーワールドのパンダファミリー
パンダ ぱんだ
アドベンチャーワールドのパンダファミリー
白浜でつなぐ命の奇跡
白浜にはパンダがたくさんいるー。
和歌山県に住む前は、パンダについてこんなイメージしかなかった。
実際に訪れた白浜には、本当にたくさんの「パンダ」がいた。
良浜、結浜、彩浜、楓浜。
2024年7月時点、アドベンチャーワールドには4頭のメスのパンダ。
そして、パンダのぬいぐるみ、帽子、サングラス、肉まん、郵便ポスト、バス、電車。
町にあふれる無数の「パンダ」たち。
ここではあらゆるヒト、モノ、バがパンダと化していく。
白浜でこうしてパンダたちと出会うまで、私はパンダについてあまりにも知らないことばかりだった。
パンダはクマ科であること。（後から教えてもらったが、アドベンチャーワールドさんでは「ジャイアントパンダ科」と表現しているそう。）
パンダのしっぽは白いこと。
そして、パンダの赤ちゃんはとても小さく産まれ、生きていくことが奇跡のような連続であるということ。
156.8g。
これは、2000～2020年までにアドベンチャーワールドで生まれたパンダの赤ちゃんの平均体重である。
手のひらにすっぽりとおさまる、ご飯茶碗一杯分ほどの重さだという。
特に2018年に生まれた彩浜は、出生時の体重が75g。
アドベンチャーワールドで生まれ育ったパンダでは一番小さかった。
自力で母乳が飲めない状態から、母「良浜」の愛情と、飼育員さんたちの24時間体制の懸命なサポートを受け、健やかに成長している。
保育器の中で必死に生きる姿が、産後すぐに保育器で育った自分の子どもと重なってしまう。
「大きくなったね」
今では体重100kg近くの彩浜に初めて会ったとき、思わずそう声をかけたくなった。
中国では「国宝」として大切に保護されているパンダ。
本来は、中国の限られた地域にだけ生息する動物である。
開発による生息地の減少や乱獲などで、野生のパンダは1980年代には千頭ほどになり、「絶滅危惧種」に指定されていた。
2016年には、生息地の保全活動により「危急種」へとランクが引き下げられているが、絶滅のおそれがなくなったわけではない。
アドベンチャーワールドはパンダの繁殖・保護の研究を目的に、パンダでは世界初となる「ブリーディングローン制度」を利用して、1994年に日中共同繁殖研究を始め、2024年の9月で30周年を迎える。
「ブリーディング」とは、「飼育・繁殖」を意味する。
中国の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地との共同研究で、2020年までに17頭の赤ちゃんパンダが誕生し、中国以外では世界最多の繁殖実績を残している。
パンダを各地で飼育し、頭数を増やすこと。
そして、飼育場所を分散させることで伝染病等が起きても絶滅を防ぐこと。
こうしてパンダを保護している。
なにより、人々が実際にパンダに出会い、「希少動物」について知ってもらうという啓蒙の意味も大きい。
パンダは、人間社会で多くの役割を担っている。
トイレットペーパーやティッシュペーパーの箱で見かける「WWF」の文字とパンダのマーク。
これは、地球の環境や生き物を守る活動を行う世界自然保護基金「WWF（World Wide Fund for Nature（世界自然保護基金）」のロゴマークである。
パンダはこの活動のシンボルを担っている。
そして和歌山県では、和歌山県警察より委託され「交通安全和歌山夢大使」も務める。
（彩浜（初代2019年～2022年）、楓浜（2代目（2022年～2024年現在））
なにより、人はパンダに出会い、癒され、笑顔になる。
「コロナ禍が明けたら、いちばんにパンダに会いに来たかった」そう言って友人が白浜を訪れてくれた。
たくさんの人が、パンダに会いに白浜にやってくる。
「パンダがここにいてくれる」この存在に、人は支えられている。
2024年7月現在、4万5,000種以上の野生生物が、絶滅危惧種とされている（IUCN（国際自然保護連合））。
生き物の種が一度絶滅してしまえば、それをよみがえらせることはもうできない。
その一つ一つすべてに目を向けることは難しいけれど、まずはこの現状をしっかりと胸に刻んでおきたい。
白浜という場で、絶滅の危機にあったパンダに、目の前で出会わせてもらっている。
ここで命がつながれていく奇跡を、パンダが大好きな一人として、これからもそっと見守らせてもらいたい。
