いのちを最大限つかいきる

紀南Good

いのちを最大限つかいきる

2023年3月18日、紀南文化会館で「いのちに触れる」講演会が開催される。
「はじめての講演会なんです。」と話す原さん。
募集は400人。はじめての講演会にしては収容人数が大きい会場だな、と思った。
小さな町で行われるイベントとしてはかなり大規模だ。

このイベントのことを知ったのは、1枚のちらしを作って欲しいというご依頼からだった。
「わたしが理事を勤めている団体で講演を行うのでそのちらしを作って欲しい」
a spoonful of sugerの公認心理師・浅井育子先生からのご相談。いつもカウンセリングや研修でお世話になっている先生だ。
日本触れる勇気づけ協会のwebサイトや、代表の原さんのブログを全て読んだ。
そしてはっきりとは記されてはいないけれど、全体的に感じる「強い思い」と「それをどう伝えるのかという葛藤」を感じ、ぜひ原さんと会いたいと思うようになった。

そして機会がやってきた。原さんは身に纏ったやわらかい雰囲気で部屋に現れた。

原体験からの協会の立ち上げ

原さんは2016年に夫をなくしている。
病気が見つかってから3年後のことだったという。
どう考えても早すぎる別れだ。
自分の夫で想像してみようと思ったが、なかなか具体的に想像することは難しい。
悲しみや困難を事前に想像することはこんなに難しいことなのか、と思う。
しかもできるだけ触れたくない、蓋をしておきたいという気持ちになった。

「あれだけ大きなできごとだったのに、忘れたくないと思っていてもやっぱり薄れていってしまう。だから続けている。自分のためでもある。」

原さんは一般社団法人日本触れる勇気づけ協会を立ち上げた理由のひとつをこう語る。

「忘れる」ということは必要なことでもある。
原さんは「忘れたくない」と感傷的になっているのではない。
「いのちを使い切って生きる」ために忘れたくないのだと話す。

人気店のサロンをたたんでの新しい出発

原さんは、協会を立ち上げる前、20年以上、ボディケアやセラピーをしていた。広告せずとも予約で埋まる人気のサロンだったという。
原さんのやさしさや芯のある考え方をみていると、その状況に納得がいく。

順調だったサロンをたたむ決断をする。

来てくださることが生活の一部となっているお客様の予約を断るのはやってはいけないことだと思っていたので苦渋の決断だった。
通ってくれるお客様にひとりひとり話をした。応援してくださる方もたくさんいたという。

「以前は全部やりたいことだと思っていたんです。だからいっぱいやっていた。やらなきゃいけないと思っていた。

だけど気づいたんです。私は10時間寝ないと元気が出ない。生産性は確かに落ちるけど、それがわたしだって。

そんなわたしがいのちを大事にして生きていく方法は何か、それを考えた末が協会の活動でした」

そこからは「いのちをどうしたら使い切れるのか」を大切にしながら活動を考えてきた。

一般社団法人「日本触れる勇気づけ協会」は、人生のエンディングに向き合う人に対してのメソッドを広める活動をしている。心への触れ方はもちろん、体への触れ方、人生への触れ方など具体的な方法論を土台としている。
悲しみをケアするだけでなく、その後の人生も視野に入れたサポートができる人材を育てたい。
「触れる勇気づけ」の認定講座を開催し、実際のサポートに役立てるための知識や技術を伝える。

「もちろん講座は必要なものだが、方法論だけでは足りない気がする。
とはいえ、自分の思いを聞いてもらう場をひらくのは、まだ先だと思い込んでいた。」
躊躇する背中を推したのは、協会のメンバーたち。
原さんの思いは体系立てた講義より、講演という形のほうが伝わると促した。

原さん、そして仲間や応援してくれる人の思いが形となったのが、今回の講演会だ。

多くの人に聞いてもらいたい、という気持ちはもちろんあったが、
それ以上に、たくさんの方が集まる会場だからこそ、人目を気にせず集中して聞いてもらいたいと、会場は大きなところを選んだ。

協会の立ち上げは勢いでできた。
続けていけるのは仲間や応援してくれる人たちのおかげだという。

いのちをつかいきるための新しい挑戦

「講演会は完璧ではない。きっと不恰好だと思う。
それでもわたしの挑戦する姿をみて、わたしも挑戦してみようと思ってもらえたら。」

遠慮することもなく、卑下することもなく、まっすぐと挑戦しようとしている。原さんの瞳に迷いは感じられなかった。

原さんの頭の中で講演会の空気感はイメージできている。聖福寺の住職 関守研悟さんの歌と共に語る。

すでに350人以上の申し込みがあるそう。
原さんの新しい挑戦を応援したい。
原さんから紡ぎ出される言葉を感じたい。
そして自分自身も「いのち」を考える時間にしたい、と思う。

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