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紀南Good

造園で日本とドイツを繋げる

Update 2020年4月17日

西牟婁郡上富田にドイツに移住して来たドミニク・シュミッツさん。 シュミッツさんが経営されるのは日本庭園をベースにした「ドミニク造園」。 日本庭園を通じてドイツと日本を繋ぐ活動もしているという。 さっそく、上富田のドミニク造園へと向かった。

「日本の心」を伝えてくれる、 ドイツ生まれの庭師さん。

「ドイツから来た庭師さんが上富田にいるよ」そう聞いた時に頭に浮かんだのは豪華で華やかな、西洋のお城に備えられたようなアシメントリーな庭だった。ここ和歌山に西洋庭園の需要がそんなにあるのかという疑問は、良い意味で完全に裏切られた。ドイツから来たドミニクさんが営むのはなんと「日本庭園」をベースにした庭造りだという。  上富田市ノ瀬。前回の紀南Goodでもレンタサイクルで巡る地元旅「ジモトリップ」で取り上げた地域だ。ドミニク造園はその市ノ瀬の街中から少し離れた場所にある。細い坂を登っていったところにドミニク造園の看板が立っていた。ドミニクさんはどうして日本で、そしてこの上富田で日本庭園を手がけているのだろう。

ドミニクさんのお宅には可愛らしい花々が慎ましく咲いている。どの季節も楽しめるという。

植物の心をみつけて、それを生かしたい。京都の老舗造園会社で学んだ、日本流の庭造り

手間はかかるが、自然で健康な姿で美しく。

木を見つめるドミニクさん。健康で生き生きとした状態にするためには、細かく見る必要がある。ひと枝ずつ、見極めて行く。

ドミニクさんは日本人の奥様と2人のお子さん、そして奥様のご両親と、奥様の実家で暮らしている。ドミニク造園は、もともと奥様の実家。入ってすぐにお庭が広がる。派手さはないがなんとも気持ちが良い空間で、この庭で過ごす時間がとても有意義であることが容易に想像できる。小学生と二歳になるお子さんも、のびのび遊んでいるそうだ。

このお庭は以前からあったそうだが、ドミニクさんが少しずつ手を入れている。とはいえ、植物を入れ替えたり、土木工事をしたりという大掛かりな仕掛けはしていない。

苔などを痛めないよう、作業は地下足袋で。それを履いた姿は凛々しい。

「丸く剪定するような手入れをすることもあるけれど、基本的にはやりたくない。植物の心を見つけて、それを生かすような仕事がしたい。」 通常花が咲き終わった初夏に刈り込むことの多い庭木。刈り込んだ後の姿は一見美しいが、生きているためにすぐに枝葉のび、手入れを続けなければその美しい姿を残すことはできない。一方、植物の良さを生かしながら、一本一本枝を切ってやると、手間はかかるものの、自然のままの姿で美しく、四季折々の姿を見せてくれるそう。また丸く刈り込むよりも風も通りやすく、光も入る。虫もわきにくくなり、植物が健康に育つそうだ。

何年かかけて少しずつ、この庭を作り続け、庭の向こう側に見える山のラインを生かすように剪定することで、庭が山と繋がり、より奥行きが広がって見えている。周りの自然を取り込む姿勢が非常に好ましく感じられる。

ドイツと全く違った庭造りの発想

ドミニクさんが造園業に従事し始めたのは1995年。父が園芸店を営んでおり、手伝っているうちに自然と関心を持つようになった。庭師として8年ほど従事した後、2003年に「近代日本庭園の先駆者」と言われる老舗の造園会社にご縁をいただいて来日し、そこで寺社仏閣や歴史のある庭園などの管理に携わった。

ドミニクさんは植物を労った丁寧な仕事をする。選定は一本一本。

日本とドイツの庭造りの考え方の違いに驚いたという。

藤棚の木を組むのも、棕櫚(シュロ)縄を使い、痛まないように。

ドイツでは、庭のイメージは設計士が作り、現場は別の職人が言われた通りにやるスタイル。一方、日本は親方が職人にも考えることや自分の個性や色を入れることを求める。日本のスタイルで仕事を始めるようになってから、庭を見るのも作るのも楽しくなったそう。  その後、ドイツに一旦帰ったドミニクさんだが、日本での活動を決意しつつ、マイスター(造園業最高資格取得者)としてベルリンで、公共事業や私邸などの仕事を行いながら職人を育て、2011年、結婚した奥様と長男と共に帰国した。

ドイツと日本の庭造りの発想を織り交ぜて。

ドイツは冬が厳しく、花が咲かないため、夏は様々な花を一堂に咲かせ、できるだけ華やかに彩る習慣がある。一方、日本では四季折々、彩る花々があり、季節の変化を楽しむことができる。私たち日本人にとっては四季の移り変わりは当たり前のものだが、ドミニクさんの目を通すことで、その素晴らしさを改めて感じることができる。

春は桜、そのあとはツツジやエゴノキ、夏はムクゲ、秋は紅葉があるし、冬はツバキが咲く。そんな四季の移ろいを自宅の庭で感じられるのはとても素敵なことだと改めて感じさせられた。 とはいえ、自宅の庭を素敵にしようと思うと、コスト的にも労力的にも負担が大きい気がする。良いことはわかっていても、なかなか気軽には取り組めそうにない。

そう思っている私にドミニクさんは「無理せずお庭と関わってほしい」という。ドイツでは自分でやれるところはやり、重機や専門的な知識が必要な時に専門家を頼るのだという。予算が少なくても可能になる方法や、自分で手入れできる木、メンテナンスしやすい木をアドバイスしてくださるそうだ。「お庭とお客さんがより近づいてくれたら嬉しい」とドミニクさんは言う。何より子供達と一緒に木を植えることはとても楽しいし、四季の移ろいや成長も楽しむことができる。

しかもドミニクさんは広い庭がなくてもちょっとしたスペースでも空間の雰囲気は大きく異なるという。 「例えば、駐車場のスペース。ドイツだったら、石畳にしたり、周りに植栽を植えたりするが、日本は殺風景な雰囲気。そこに日本庭園の心を取り入れれば、それだけで特別な空間になる。 同じように賃貸のおうちだってやれることはありますよ。」 日本の良さとドイツの良さ。その両方を柔軟に取り入れて、ドミニクさんは私たちに新しい提案をしてくれる。

日本庭園の心で繋げるドイツと日本

ドミニクさんは、市ノ瀬を拠点として庭づくりを行なっていきたいと考えている。熊野古道などの環境はもちろん、人が暖かいことがとても気に入っているそうだ。

しかし活動は日本全国へ、そして日本に止まらない。2016年にドイツにて日本庭園についての講演とワークショップを行なったばかり。「植物の心を見つけて、自然な姿で」つくる日本のスタイルに、自然=ワイルドなイメージのあるドイツの人々は驚いたという。また、目に見えないところを作り込む日本の庭造りに対し、「本当にそこまでやるのか」と興味津々。

一方、日本でも庭造りは昔の方法でなく、ドイツのように分業が進んでいる。植物の心を生かす仕事のために、若い人に学んでほしい、とドミニクさんは語る。 ドイツと日本の両方で活動するドミニクさんだからこそ、後世に伝わる素敵にな庭造りを伝えていけそうだ。

ドイツで行なったワークショップ。関守石をつくるワークショップは、立ち入り禁止の表示がなくてもお客様が入らないようにできることに驚いていたそう。
家の奥様。前衛的な芸術が浸透しているベルリンで活動していてドミニクさんと出会ったそう。

Q.ご家族で日本に帰ってこられてどうですか??

ベルリンで生まれた長男は京都で幼稚園、小学校1年間を過ごし、二年生になるこの春に上富田に。慣れるかどうか不安でしたが、すぐに馴染み、植物はもちろん、虫やカエルを見つけたり、お友達と遊んだりしています。

ドミニクさんのお宅のお庭。以前の庭師さんが行なった仕事も残しつつ、少しずつ手を入れているそう。子供達が生き生きと遊んでいるのが目に浮かぶよう。

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