看護師からテレワーカーへ「自分らしく働くことを応援したい」

家ではたらくカレッジ

看護師からテレワーカーへ「自分らしく働くことを応援したい」

「子どもの授乳をしているときに、急に涙がぽろぽろと出てきて。自分は全然大丈夫だと思っていたのに、本当にこんなふうになるんだなと思って」
育児と家事だけの閉ざされた日々に、心が疲弊していたという佐々木さん。当時を振り返り、そう話してくださいました。

「看護師さんだった!」「アメリカに住んでいた!」「デザイナーさん!」「ライターさんでもある!」
佐々木さんに初めてお会いするまでは、そんな噂を耳にして、「とにかくすごい方!」というイメージを持っていました。
けれども実際にお会いすると、「そんなすごないですよ〜」と笑い飛ばしてしまう、気さくな笑顔がとても印象的でした。頼もしい存在でありながら、ときには弱さも素直に見せてくださる佐々木さん。どこかほっとさせてもらえる人柄に、自然と親しみを感じました。

現在は、デザイナーとしてパッケージなどの制作をする他、「家ではたらくカレッジ」のコーディネーターや、ディレクションのサポートもされています。
以前は看護師として働いていた佐々木さんに、現在のテレワークという働き方について、お話を伺いました。

自分らしく働ける場所を提供したい

「病院で勤務するなかで、さまざまな患者さんとそのご家族に出会ってきました。
突然の事故で脳にダメージを受け、半身麻痺になってしまった方、末期癌で死に近づいていく方、見た目は健康な人と変わらないけれど、慢性的な病気と一生付き合うことが必要な方。そんな方々に、『自分らしく生きていてほしい』という思いをずっともっていました」

病気や障害が原因で以前の生活に戻ることが難しい方や、以前の生活に戻るためには時間がかかる方たちと関わりを持つ上で重要だなと感じていたもの。それが「退院支援」という分野だったそうです。

「看護師もテレワークも、『自分らしく働ける場所を提供したい』というところでは、つながっているんです」
医療の現場で活躍されていた方が、なぜテレワークという新しい働き方を選ばれたのか。最初は、そこに疑問を抱いていました。
けれど佐々木さんのお話を伺う中で、大切なのは「働き方」そのものではなく、「自分がどこに信念を置いているのか」ということなのだと、気づかされました。

現在は、TETAUが提供する学校教育での「未来をてたうプロジェクトMIAI」にも参加。南紀はまゆう支援学校や、みはま支援学校で、これから社会に出ていく生徒たちの「自分らしく生きる・働く」という学びをサポートをされています。

「生徒自身が『自分にできること』を考え、課題を乗り越えていく姿が頼もしいなと感じました。これからも、応援していきたいですね」

人柄がつなぐテレワークでの仕事

ご主人のお仕事の関係で、2年間アメリカで生活。第一子のお子さんは、アメリカで出産されたそうです。帰国後、二人目のお子さんを出産。子育てと家事に追われる日々の中でふと、「テレワークフェア」のチラシを目にしました。
「家で働けるんだ!」「和歌山県が主催だから安心!」「しかも託児付き!」とよろこんで申し込みしたものの、家族がコロナに罹り、残念ながら欠席。そんな中、担当の方が資料を送ってくださり、『家ではたらくカレッジ』を知りました。
「今度こそ!」と参加したものの、テレワーカー養成研修の一日目に子どもが発熱。途中で早退することとなりました。課題であったGoogleアカウントを取得し、チャットに登録。その後は、チャットの様子を伺いながら、自分でできるところを進めてみたそうです。

「とにかく自分でお金を稼げるようになりたかったので、必死でした(笑)」
そう言い切る佐々木さん。そのまっすぐさもかっこいいなと感じます。

昨年度は「家ではたらくカレッジ」のコーディネーターとして、受講生の皆さんをサポート。
パソコンの使い方などで質問をされたときには、受講生の方と一緒に検索して調べていたそうです。
「私は特別なスキルや経験があるわけではないので…」
そう控えめに話す佐々木さんですが、一緒に悩み、考え、ときには笑い飛ばしてくれる明るさに、私はいつも支えていただいています。

テレワークでは、やりとりのほとんどがパソコン上で、人柄が見える機会はあまり多くありません。
それでも佐々木さんの、課題一つ一つに真摯に向き合うひたむきさ、何事にも前向きに取り組む姿勢、そして自然に生まれる信頼感。そのすべてが、仕事でのつながりを、そして人とのつながりを広げているのだと感じました。
「佐々木さんにお願いしたい」「佐々木さんと一緒に仕事がしたい」そんなふうに感じる人が多くいるのではないのでしょうか。

みんなが楽しく、自分らしくいてほしい

「あなたが最期でよかった」
看護師最後の出勤の日、担当されていた患者さんが亡くなったそうです。そのときに、ご家族の方に言ってもらった言葉が、今でも心に残っているそうです。
「『こんな私でも、誰かの役に立てたんだ』そう思うことができました」

自分にできることは少ないという佐々木さん。
「頭も良くないし、要領も良くないし、かといって喋るのも上手ではないですね(笑)」
それでも、テレワークで自分にできることをやっていきたいと語ってくれました。

「みんなが悲しい思いをしないでいてほしいなと思います。これは自分自身にも言えることですけれどね!」
他人から見てどうとかではなく、自分が本当に楽か、楽しく、自分らしくいられるかー
それは、看護師時代から変わらない思いだそうです。
「できんことがいっぱいあっても、今できることをしたらええやんと思います。『ご飯が一口食べられたね』『リハビリがんばったね』『今日も息できてるやん』と」
一つ一つのことを、自分で認めて大切にしていってほしい。
いろいろな方の人生を支えてこられた佐々木さんの言葉だからこそ、胸にくるものがありました。

「今は見習い中」というディレクターのお仕事。
いつか佐々木さんが描く「自分らしく働ける場所を提供したい」という想いが形になっていくことを、私も一緒に応援させてもらいたいなと思います。