地域の良いモノ・ヒト・コト・バを発信

TETAU

自分たちの暮らす街を、見つめ直し意見を持つ〜白浜町・日置 日置中学校総合学習〜

Update 2020年8月11日

黒板からふと目線を窓にやると、そこには深青の太平洋。海と共にある学生生活。なんとも羨ましい場所に建つ日置中学校で、SNS「インスタグラム」を用いた総合学習が行われた。

学校の3階部分から見える景色。天気が良い日は四国が見える日もある。

46名の全校生徒が参加。「日置の魅力は何か?」「魅力を発信するために何ができるか」をワークショップの中で生徒自身が考えることからはじまった。合計17コマの授業の中で実際に撮影を行い、インスタグラムでアカウントを開設し、写真の投稿も行った。

ツールこそ「インスタグラム」だが、この授業の目的はITリテラシーを身につけるに留まらない。外部の講師を招くことで世界を広げ、広げた視野で地域の魅力を発見し、自分の意見を持つことを目指している。

この授業の中心となったのは、日置中学校の前久保先生と原田先生。学校教育の中で、新しい取り組みを行うことは、簡単ではなさそうに感じるが、一歩踏み出した理由はなんだろうか。

日置中学校でのワーク
日置の良いところを洗い出ししたワーク。マインドマップが身についていることに驚く。

ハードルを乗り越えて、この授業を開催した意味。

昨年までは、「地域の資源を使って、商品作りをする」という活動を行っていた。予算も時間も乏しい中で「商品」を作ることは難しく、またそれを買ってもらうことも難しい。生徒たちも納得のできない商品しかできず、地域の人たちが応援するという意味で購入してくれるに留まっていた。

それはそれで意義のある授業ではあったが、先生たちはこのままで良いとも考えていなかった。

「社会が変わっていく中で、生み出す力が大人に欠けているから子供たちも身につかない。」「教師というのは授業や教科のプロではあるが、専門的な分、視野が狭い。大人たちの視野が狭ければ、当然子供たちの視野を広げることはできない。だから様々な人たちに関わってもらう授業を行いたいと思った。」

意見を言える人になってほしい。変化する社会の中で生み出す力をつけてほしい。
そのために、まずは自分たちがそうならなければ、という姿勢が先生たちの熱意の現れだ。

撮影会での様子
近くの海岸での撮影を行った。

地域なんてなくなっても構わない、という子どもたちの本質とは。

授業は全部で17コマ。
実際の授業を始めるまでに、日置中学校の先生方とTETAUのプロジェクトチームと何回も入念に打ち合わせを繰り返した。

生徒たちが自発的に考えていくために、この授業は数多くのワークショップを取り入れることになった。

授業が少し進んだ頃、「日置の良いところ、こうなったら良いと思うところ」を洗い出すワークを開催。
そこで出てきた意見は決してポジティブではない。
「津波がきたらなくなってしまう」「地域なんてなくなっても構わない」
そんな意見もたくさん出てきた。

子どもたちから出てきたそんな意見に、
「悲しい」とか「そんなことを言ってはダメだ」というのに留まるのは、最も避けたいことだ。
それは即座に思考停止を意味する。

本当に地域がなくなっても構わないのか、それをそこで留めず、考える機会が必要だ。

インスタグラムを知る授業
インスタグラムのことを実戦で学ぶ時間もしっかりととった。

ITに触れる機会をふやすこと。

今回採用された「インスタグラム」は、主に画像を中心として、インターネット上に発信し、それを介して世界中の人たちとつながることのできるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の一つ。

個人的に使用している生徒もいたが、少数派。
家庭の考え方や事情によって、ITツールに触れる機会は極端に差が出る。

すでにITツールは、「インフラ」になっている。
今回の授業では少しでもそんなツールに触れることで、苦手意識を取り除きたいという思いもあった。

個人的に使えば難しいものではないが、「情報を発信する」となると少し様子が変わってくる。
「情報を発信し、知ってもらう」ことを考えることは、自分のこと、地域のことを知ることから始まり、また相手のことをじっくりと考えなければ進められない。

単純にITツールを使えば良い、というだけでなく「情報を発信する」ということを通して、自分のこと、地域のことを考えるきっかけにしたいと考えた。

ハッシュタグを考える
インスタグタムのタイトルや、ハッシュタグを生徒たちと考えた。

視点を変える、という習慣をつける。

地域の魅力はそう多くは出てこない。
多くは「海・山・川」といった自然だ。
確かに日置の自然は豊かで素晴らしい。
ただ、日本の多くの地域が同じような資源を持っているということにも目を向けなければならない。

元々地域が他と異なる文化や環境を持っている、ということはまれだ。
しかし人が評価するのは「歴史」や「環境」だけではない。

地域のことを発信しようと思った時に必要になるのは「視点を変えること」。
「正しい」ということに慣れてしまった生徒たちが、個性的な意見を出すことを躊躇する。

そんな時に活躍するのは、通常の授業で活躍する生徒とは異なる生徒かもしれない。
通常の授業であれば埋もれてしまうかもしれないその意見が、この場では力を発揮する。
そして、その柔軟な発想は他の生徒にも伝染していく。

ここからがスタート。ここからだ。

何回かの授業を経て、実際に生徒が写真を撮影し、インスタグラムのアカウントが作られた。

「視点を変える」という目線を持って撮影された画像は、「視点を変えよう」と努力したあとが垣間見える。

学校内の授業では、なかなか自由に遠出をすることは難しい。
生徒からも「もっといろんなところで撮影したい」「もっと深く調べたい」という意見も出た。
ただ、この時に身に付けた「視点」が、これから日常生活で様々な気づきを得るのに役立っていくと感じる。

地域の魅力を「創り出す」というフェーズへ向けて。

この授業は「振り返り」もとても丁寧に行われている。

授業終了後の振り返りでは、「きれいな写真だけを発信しても意味がない」「目標を設定しなかったので成果を計ることができなかった」「もっと地域の人を巻き込んでやりたい」「高齢者の人にも伝えたい」など生徒自身から活発に意見が出された。先生たちの思いは、間違いなく成果となっているのを感じる。

確かにこのインスタグラムの発信だけで地域が変化する、ということはない。
ただ、街を発信していくには、新しいものを創り出すのには時間がかかるものだ。
若い頃から、様々なことを考え、知り、動くというところに価値があるのだと信じたい。

そしてこの授業は、これで終わりではなく、すでに来季の計画に入っている。
この授業を支える先生方や、TETAU、また地域の人たちも、ひとつ一つの経験を生かして、次の段階に進んでいく。

きっとこの授業は地域の魅力を創り出す、というフェーズに到達することだろう。
そこまでに私たちは根気よく、子供たちに考える場を作っていくことが必要となる。

大人がまずは考える。

わたしたち、大人がまずは考え、行動することが必要ではないだろうか。
子どもたちがどうして「地域なんてなくなっても構わない」というのか、考えなければならない。
そしてわたしたちは何をすべきなのか、考えなければならない。

「生み出す力がない大人が教えて、子どもたちが何か生み出せるようにはならない」
先生の言葉を、わたしたちはもう一度反芻すべきだ。

わたしたちもこの日置中学校の活動を行うことで、子どもたちに教えるのではなく、一緒に考える、ということを続けていきたいと思う。

もしこの活動が気になったなら、自分も一緒に考えたいと思ったなら、ぜひ日置中学校のインスタグラムアカウントをフォローして、活動に参加してもらいたいと思う。

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