夫と二人三脚、炭やきさんになる〜移住模索編〜

紀南Good

夫と二人三脚、炭やきさんになる〜移住模索編〜

山に入ると鳥の鳴き声や水の流れる音、風で木が揺れる音が聞こえてくる。
その中に夫のチェーンソーの音も聞こえてくる。

5年前、名古屋市から秋津川に移住し、夫と共に紀州備長炭を焼いています。

移住、しようか

きっかけは、夫の退職。

夫は、名古屋港で船の荷物の積み降ろし作業をしていました。
長男が産まれた頃、夫は仕事がとても忙しく、一週間休みなしで働いていた時もありました。
いろいろなことが重なり、夫は体調を壊してしまうことに。
体を壊してまで、今の仕事にこだわることはない。
別の仕事を探してもいいのではないか。
夫婦で何度も話し合い、夫は仕事を辞めることになりました。

次はどんな仕事にしようか、夫婦で話し合っていた時、夫からポツリと出た「移住でもする?」という言葉。

最初は冗談だろうと思っていました。
しかし、夫と話しているうちに、移住いいかも、名古屋にこだわる必要ない。と思うようになり、それから二人で移住先を考えはじめたのです。

紀州備長炭との出会い

まず候補に挙がったのが、和歌山県。
理由は2つありました。

一つは、旦那が熊野古道を歩いたときに、「近露」という地域を気に入って、住んでみたいと思ったこと。
もう一つは、二人で初めて旅行したのが和歌山県で、とても好きになったこと。

そう決まってからの夫の行動は、驚くほど素早かったです。
一週間も経たないうちに「大阪ふるさと暮らし情報センター」へ行くことになり、日高川町で開催される移住者同士の交流会にも参加することになりました。

移住をすると決めてから初めての和歌山県は、少し緊張しました。
移住者同士の交流会ではBBQをしながら、移住してまだ間もないご家族や京都から移住してきたご夫婦、いろんな方にお話を聞きました。
この時、使われていたのが紀州備長炭。
初めて紀州備長炭で焼いたお肉を頂きました。

交流会のあと、知り合った移住者の方に夕飯をご馳走になり泊めていただきました。
夜、近くでシカの鳴く声。
野生動物が身近にいない名古屋ではできない体験でした。少しの怖さを感じつつも、それ以上に、和歌山に移住したら、こういう自然を身近に感じることができるんだとワクワクしたことをよく覚えています。

仕事と住む場所

翌日、日高川町役場の方と仕事と住む家についての話し合いがありました。
どんな求人があり、私たちには何ができるのか。
前職が港湾の仕事で資格もある夫は、新しく港を作るとのことで港湾の求人を紹介されましたが、名古屋にいた時と同じ仕事には就きたくないと断りました。

空き家も2軒程紹介してもらいました。
一軒は、川の近くの家。
細い路地があり、私が想像していた「田舎」という雰囲気のあるところでした。
もう一軒は、御坊駅のすぐ近くの綺麗な家。
しかし、御坊市という大きな街の中だったので、「田舎」という感じがありませんでした。
家賃や周りの環境などを考え、空き家も断ることに。
仕事も家も私達の希望に合いませんでした。

移住を考え始めて日も浅い、初めから上手くはいかない。
そう思っていても、仕事も住む場所も決まらず、この先本当に移住できるのか、仕事は見つかるのか、不安になったのを覚えています。

次の日は、一旦「移住」から離れて観光目的で高野山へ。
道中、夫とこれからのことも話しました。
日高川では、仕事も住む場所も見つけられなかったので落ち込んでいましたが、よいリフレッシュになりました。

日高川町を見学したあと、串本町にある短期滞在住宅を借り、数日かけて他の地域も訪れることにしていました。
串本や古座川、田辺市、そして夫が住みたいと思っていた「近露」にも。
私にとっては初めての近露。
夫が住みたいと思ったのがよく分かるほど、自然豊かで、時間がゆっくり流れているようなとても心地のいい場所でした。
しかし、問題が一つ。

仕事どうする??

近露へ移住してきている方は、自分で会社やお店をしていて、街まで出て働くということをしなくても暮らしていける方たちばかりでした。
特に何か仕事になるようなスキルもない私達。
近露に住んでも仕事の為に街へでなければなりません。
距離もあり、移住後も名古屋での生活と変わらないのは、意味がないのでは…。

「移住」ということだけに気を取られていて、仕事のこと住む家のことは地域を訪問したら見つかるだろうと思っていました。

仕事をどうするかという課題を残したまま、今回の和歌山訪問は終わってしまいました。