粘菌って、美しい!すぐ近くにいるけど探さないと見つからない
発見されたものだけでも世界で約1000種、日本で約500種ある粘菌(今は変形菌と呼ぶそう)。近頃ではバリエーション豊かな粘菌を収集する女子や子どもが急上昇し、ちょっとしたブームの兆しをみせている。一体なぜ??
粘菌コレクターの西尾さんに尋ねると、その魅力はなんといっても「見た目の美しさ」にあるとか。種によってフォルムがさまざまで、色彩も赤、黄、紫…時にキラキラ光をまとっていたりと、実にイロトリドリ。
この粘菌、森の中だけでなく、街の中や家の庭、どこにでも存在する実は身近なものだそうだけど、よーく目を凝らして探さないと見つからないというレア感もゲーム好きやコレクター心をくすぐるということだろうか?そんな美しくもミステリアスなミクロ世界へ飛び込んでみよう。
動物であり、植物でもある キノコでもなくカビでもない
型にはまらぬボーダーレスな生き方
粘菌って一体何ものなの? しっかりと説明できる人はまだまだ少ない。それは、粘菌の特殊な生き様に理由があるようだ。
そもそも、姿カタチをどんどん変えていくので「変形菌」とも呼ばれている。菌というと一般的に悪いイメージも伴うけれど、粘菌は細菌(バクテリア)とも菌類(カビやキノコ)とも違うという。胞子から発芽すると、単細胞のアメーバが現れ、動き回って木などを腐らせるバクテリアを食べて増殖する。やがて大きな「変形体」に。さらに土が乾いて日光に当たると「子実体(キノコのようなもの)」となって胞子を飛ばし、子孫を残す。その時点で動きはなくなるが、死んだわけではない。そんな風に環境によって動き回る「動物」的な性質と、子実体を形成して胞子を飛ばす「菌類」や「植物」的な要素をもつ、なんとも不思議なイキモノなのだ。
粘菌探しのススメ
今日からあなたもミクロ世界の虜に!
粘菌がよく見つかるのは森の中。なぜかというと、植物を腐らせるバクテリアを食料とし、森の食物連鎖の中で腐敗を調整する役割を担っているからだ。
採集する場合は「子実体」と呼ばれるキノコの方が見つけやすく、雨が降った後、また梅雨時から夏にかけてが狙い目。枯れ木や落ち葉にくっついていることが多く、時に生きた木に出ることも。実際、博物学者である南方熊楠は生きた木に生える粘菌を研究し、自宅の柿の木で新種「ミナカテラ・ロンギフィラ(和名はミナカタホコリ)」を見つけている。
さらに「変形体」と呼ばれるアメーバ状態の場合は飼育もできるという(なんと培養するのは寒天の上、エサはオートミール!)。乾燥と日光が苦手な繊細さゆえ、日光が当たらないよう要注意。この変形体を森の中で見つけるのは至難の業というが、粘菌キットなるものが売られているようなので、気になる人はオンラインで探してみよう!
実は粘菌、森の中だけでなく、公園や家の庭、花壇や軒下など、意外と身近なところに生息しているそうな。変形体はじめじめした暗いところを、子実体は明るく乾燥した場所を好むため、その中間になる風通しの良い場所(粘菌は胞子で増えるため)が狙い目! 葉っぱの裏や朽ちた木などを、虫眼鏡で探してみよう。ムラサキホコリは比較的大きくもじゃもじゃとした毛のような形も特徴的なので初心者でも見つけやすい。雨が降った後はツノホコリ科(写真右下)もわかりやすくなるそう。見つけたらナイフなどを使って、小さな箱に入れて採取してね。