難航したテーマ決め。「聞いてもらえる」ことで言語化することの大切さを知る。ーALIVE答申先体験記#2
Aliveは地域側が解決したいテーマを掲げる。
テーマを決めるのにそれなりに時間がかかった。過去のAliveで一番難航した、とも言われた。
1番印象に残っているのは、「最終的に地域課題を解決するプロジェクトを起こしたいのであれば、100のプロジェクトを起こすのではなぜダメなのか?」と問われたことだ。
それでは上手くない。起こすことを目的としたプロジェクトでは課題解決にはならない。余計に生活者との分断は大きくなるばかりだ、と感じた。地域にとって重要なのは、プロジェクトそのものではない。
そう考えるようになったのは、私自身の体験に他ならない。
地域での「プロジェクトが進んでいかない」という体験。
移住してきた当時、わたしは地域には「何かが足りないのだから、それを持ち込めば課題は解決するはずだ」と思っていた。それが営業力であったり、企画力であったり、広報力であったりするはずだと思っていた。それならできるだろう、とたかをくくっていた。
しかし、実際に行動を起こしてみても、なかなか思うようにならない。チームのメンバーは何人もいる。なのに、自分が全てを行うという覚悟がなければプロジェクトは動かなかった。
タスクにまで落として指示すればお願いすれば、快くやってくれる。しかし、その人ができる状態にまで具体的にする必要がある。そこにものすごく時間がかかった。
1番苦労したのは、感情のフォローにも入らなければならなかったことだ。目を離すと、「私は嫌われてる」と拗ねてしまうことさえあった。それでもそう思っていることが伝わりさえすれば対処のしようもあるが、限界まで伝わってこない。周りに不安を撒き散らすこともあり、その収束にも手間がかかる。ディレクションに使える時間に制限がある中で、隅々まで見渡すのは限界があった。
「どうしてそうなるのだろう」
移住した後から3年間ほどは、ずっと悩んでいた。
次第にそれがなぜ起こるのかがわかってきた。
タスクで投げたのでは人の行動に方向性がなくなってしまう。具体的な行動を指示すれば目的をみるのではなく、「私」を見て行動する。自分では考えず、常に正解を求める。「私」ばかり見るから「私」の振る舞いひとつで感情的になる。
プロジェクトが進まないと感じたのは1回や2回ではなかった。
非常に優秀だと感じる人でも、枠がないと動くきっかけを掴むことができないようだった。枠が見えれば動けるが、枠をつくる人がいない。
地域に必要なのは、企画力でも営業力でも広報力でもなかった。
「自分で考え、自分で行動する。そしてそれを他人と協力して行う」ということだった。そしてそれができるための自己肯定感、自主性、自律するための成長の機会だった。
プロジェクトの進行よりも学びの機会の創出に。
「このままでは私もどこかで止まってしまう」
大きな危機感を感じた私は、プロジェクトは抑え、学び成長する機会の創出に全てのエネルギーを向けることにした。もちろん、スキルを高める場ではない。最初に手がけるのは「自己肯定感」だと覚悟した。
それは人間の成長そのものを体験しなおす機会だ。それを本当にやるのかと迷いもあった。
できる人を探す方が楽ではないか?と何度も自問もした。しかし、できる人が1人や2人いたとしても、結局は同じことだ。「自分で考え、自分で行動する、そしてそれを他人と協力して行う」つまり互立できる人材を育てなければならないと感じてきた。
そうして試行錯誤を続けて、学びの場づくりは6年経った。まだまだ課題は山積みだが、移住してきた当時の課題はクリアになってきている。実際にいろんなプロジェクトが私がいなくても進んでいくようになってきた。
そういうプロセスを歩んできた私は、「人が育たなければ、プロジェクトを起こしても意味がない」と感じてきた。
実際、地域ではいろんなプロジェクトが起こっている。まだこの地域では、立ち上がる人間はそれなりの数いるということだ。しかし多くはどこかで行き詰まる。プロジェクトのリーダーだけでやれることは少ない。周りの協力がなければプロジェクトが上手くいかないのはわたしも同じだった。
だから「プロジェクトを起こす」だけでは意味がない。プロジェクトに参画する「人」を創出しなければ、プロジェクトだけが浮いてしまう。
Aliveのように地域の外から参画してもらえるのであれば、地域にいる私が難しいと感じている「地域の人が地域外の人の異なる価値観との出会い」を一緒に起こしてもらえると思った。
うまく伝えられず、やきもきもした。しかし、何度でもAliveは付き合ってくれた。
ミーティングを重ねる中で、「どうせわかってもらえないだろう」と拗ねていて、言語化する努力を怠っていたと気づいた。そこからは自分の言語能力の限界を感じつつも、考えに考えた。
結果、理解してもらうことができ、テーマが決定した。「理解してもらえる」という体験から、伝える気持ちを取り戻し、外の人の力を借りる、ということにさらにポジティブになれた気がする。
テーマを決める段階からAliveは始まっていた。私にとっての「異なる価値観との交流」であった。
納得いくテーマが決定。動き出す。
決定したテーマは以下の通りだ。
紀南地域の課題を住民協働で解決していけるよう自主的な活動を実行・継続し、キーマンだけでなく地域内外の人のネットワークが形成され「互立」な状態へ。
~地域内外の人が参加し、異なる価値観に触れる体験を3年間累計で地域の人1,250名にTETAUが提供している仕組みづくり~
知れば知るほど、考えれば考えるほど、壮大で奥の深いテーマだ。
短い期間でつかむことは難しいだろう。
でも私は本気で挑みたい。ALIVEにも答申先が本気でなければ、参加者も本気にならない、と言われた。だから本心でぶつかりたい。その気持ちをALIVEが後押ししてくれた。
参加者に任せっきりにすることなく、私も考え抜きたい。いよいよSessionがはじまる。