地域には外の力が必要か。ALIVEに参加した理由ーALIVE答申先体験記#1
最初にお話をいただいたときには、それほどテンションが上がらなかった。
ALIVE(アライブ)とは、一般社団法人Aliveが開催する「企業に地域の課題を解決することをテーマにした越境学習プログラム」だ。20名ほどの都会の企業人が私たちの地域にきてテーマを解決するための企画を行う。
「終わった後も継続して地域を支援する人も多い」「みんなが本気になる」ー。いろんなメリットを聞いた。貴重な機会であるということはわかる。けれども両手をあげて歓迎するのは難しかった。
越境学習の負担の大きさと継続性の難しさ、だけど必要だという思い
TETAUはこれまでもワーケーションや越境学習などの取り組みに参画してきた。それに、メンバーの学びにも「異なる価値観」や「体験」を積極的に取り入れている。異なる価値観に触れることは、成長のためにとても大切な体験だと考えているからだ。
しかし、これまでの方法で都会の企業人を迎えるのは、得るものよりも負担が大きく、疲れていた。短い時間では、地域のことやテーマを深く掘り下げることが難しい。結果、どうしても企画は表面的になりがちだ。
それでも参加を決めたのは、やはり「異なる価値観に触れる」ことを重視したからだ。人は成長し、役割や居場所を得るとどうしてもコンフォートゾーンにはまってしまう。個人としては理想的な状況でもあるが、組織としての成長は止まる。TETAUでも課題のひとつだと考えていた。「自分が快適」な状態(自律)から、「チームのメンバーも力を発揮できる」状態(互立)をつくりあげるには、異なる体験が必要だと考えた。
異なる体験を体験するとメンバーがどのように反応するのか。今後、どのように外の組織と関わっていけばいいのか、その答えを導き出せたらと思った。
「合わせなきゃ」と思わなくてもいい、自己肯定感の高さが必須
ALIVEはひとつのテーマに対して、4~6つほどのチームを形成する。チームごとに地域のメンバーが1名ずつ入る。企業人とTETAUのメンバーが一緒に企画する。
大企業の社員というだけで気後れする。「企業メンバーの人に合わせなきゃ!」「わからなくてもわかったふりをして邪魔をしてはいけない」と考えてしまう。それでは地域の人間としての役割を発揮できない。
立派な意見でなくてもいい。上手に言語化できなくてもいい。しかし、自分の意見や思いををそのままアウトプットするだけでも、「自己肯定感」がなければ難しい。コミュニケーションが何度もやりとりして、お互いに良いものを見つけていく作業だ、ということがつかめず、相手の反応に一喜一憂してしまう。
地域は自己肯定感が高まる機会が少ない。お互いの顔が見えすぎてしまう狭い地域では、顔色を伺うことこそ大切なことで、自分の思ったことを率直にいうのはリスクでしかないからだ。だから本当は違うと感じていても、外に出すことができない。自分の中で「わたしはだめなんだ」とじめじめとした部分を持っている人が多い。さらに意見は言えなくなる、負のループにはまってしまっている。
わたしの中では「自己肯定感が低いこと」は優先順位が最も高い地域課題だ。
もちろん企画ができる人が少ない地方では、思考できる存在は喉から出るほど欲しい。しかし、簡単に外からのブレインを受け入れれば、中と外が分断し、チームが崩れてしまう。だからこれまで「まだ外の力は借りない」と決めていた。
そうして自己肯定感をあげるところから、学びと成長の場づくりに特化してきた。自分がどう思っているのかすら、わからなくなっている状態から、自分の意見を言えるようになることを重視してきた。学びや成長の場づくりをスタートして、7年経っている。
はじめて「やってみてもいいかもしれない」と思えた。
ブレーキをかけていたはずなのに、今回はやれるかもしれない、と思えた。自分でも驚いた。外からの強い意見があっても「大丈夫」だと思えた。
TETAUも成長している。新しいことにチャレンジしていくべきだ、という思いが参加する動機のひとつとなった。
チームのことが自分ごとになっていなければ参加は難しい
一番危惧していたのは、チームのメンバーが参加してくれるかどうか、だった。
全工程の7日間、過密なスケジュールのイベントに参加してもらわなければならない。
TETAUは個人の価値観や意見を最も大事にしている。1人1人が自律しているからこそ、会社から言われたから、は通用しない。「いやなことは、いやという」というルールがあるTETAUだ。その文化を自ら破って、強制的に参加させるわけにはいかない。かといって誰でもいいというわけではない。どう感じたのかをアウトプットできるメンバーでなければ意味がない。
普段自由な働き方を実行しているTETAUにとって密なスケジュールはストレスの元でしかない。それでも参加してもいい、と言ってもらえるのはかなり難しいことだ。
まずは私が本気にならなければ、と思った。
外からの刺激が必要なのはなぜなのか。今回の取り組みで何を得たいのか。私が本気でなければ、見透かされる。本当に参画するべきなのか、するとしたら何を得たいのか、本気で考えた。
わたしの思いが届いたのかは定かではないが、無事参画してもらいたいメンバーに了承を得られた。
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そうしたいくつかの課題をクリアして、ALIVEへの参加を決意した。
地域には外の力が必要だと思う。しかし、外に頼ればうまくいくわけではない。実際に多くの自治体に外の力が入っているが、根本的な解決に向かわないのはそのせいだと考えている。地域側は「やってもらえるなら」と考えるのではなく、自分たちが受け止められるのか、という問いを自身に投げかけなければならない。
その問いこそが、地域そのものを成長させるきっかけであり、越境学習の最も大きな成果だと考えている。いただいたこのAliveという機会をどう生かしていけるのか、それは私たち次第だ。