あれもこれも、南海トラフの恩恵!?火山がないのに温泉が出る紀南の秘密。
和歌山県紀南地域は、とても個性的な温泉がたくさんあります。
日本最古の湯のひとつ、白浜温泉。
日本三代美人の湯、龍神温泉。
那智の滝の麓、勝浦温泉。
世界遺産のお風呂を持つ本宮温泉郷、、、などなど。
どれもすごく個性的で素敵な温泉です。
でも紀南には火山はないんです。
温泉って火山の熱で温泉は湧き出るんだと思ってました、、、
なんで火山がないのに温泉が出るんだろ??
本州最南端の町、串本町の「南紀熊野ジオパークセンター」で、研究員の福村さんにお聞きしてきました!
紀南の温泉は、南海トラフでプレートが沈み込むことで起こってるんです。
え、南海トラフって、地震のあれですか!?
そうです。まず「南海トラフ」ってなんなのか、ということからご説明しますね。
トラフというのは、窪んだ海底地形のことを指します。トラフという地形ができる理由にはいろいろありますが、南海トラフは紀伊半島の南でプレートが沈み込んでできた窪みです。
しらなかったです、、、なんとなく南海トラフって使ってました、、、
南海トラフでプレートが沈み込み、紀伊半島の地面の下に潜り込んでいきます。そのプレートに含まれた水分が地中で温められるとプレートから水分が放出され上昇してきます。
へー!
でもこれは日本中で起きていることなんですよ。
え?じゃあ日本中で温泉が出るってことですか?
実は温泉は地下深く掘ればどこでも出るんです。紀南地域は古くから湧き出ている高温の温泉があることが特徴ですね。沈み込んだプレートが編成して水分が放出される現象は日本中で起きているのですが、紀南地域で温泉として地表に出てくるのは、実は1400万年の噴火が理由だったりします。
ん!?どういうことですか!?
1400万年前に紀南地域で大噴火が起きました。その大きさは半径20×40km。阿蘇山のカルデラよりかなり大きなカルデラです。
阿蘇山の噴火は約9万年前なのに対して、こちらはかなり前の噴火なので、地形は風化してわかりにくくなっています。
噴火のマグマは地表だけでなく、地中にも広がっていて、その固まったマグマに沿って温泉の通り道ができました。
通常だと地表に出るまでに吸収されてしまうけれど、その道があることで、温泉が地表まで出てきてるんですよ。
なんと!噴火があったから温泉が出るというのはそういうことなんですね!
そうなんです。だから紀南の温泉は塩分濃度が高い。海の水だったっていう証拠ですね。
ちなみに、、、温泉として出てくるまでにどれくらいの時間がかかるんですか?
プレートから水が染み出すのが深さ30kmくらいです。30度の角度で沈み込むプレートが深さ30kmまで到達するには、60km進む必要があります。プレートの運動が年間約5cmだとすると60km進むためには120万年かかる計算ですね。さらに脱水してから上昇するまで時間がかかるので、実際にはもっとかかると考えられます。
えー!私たちが使ってる温泉が海だったのは100万年以上前!?なんだかとっても貴重なものに思えてきました、、、
ちなみに、大噴火の時のマグマは地表でも見ることができますよ。熊野カルデラは田辺市の本宮町から古座川町、那智勝浦町、新宮市、太地町にわたっています。那智の滝、ごとひき岩、橋杭岩なんかはその時にで固まったマグマ、つまり火成岩の周りの柔らかいところが削られてできたあとなんです。
え〜!熊野三山の滝も岩もマグマでできたんですか?
そうです。かつてないほど大きな火山活動でできた地形は古代の人にとって神秘的で、自然への畏敬を生んだことでしょう。そこから熊野の自然信仰に繋がってるのだと思います。熊野カルデラの位置と熊野信仰は完全に一致していますもんね。
へ〜!まさか、温泉から熊野信仰の話になるとは思っていませんでした。
信仰だけでなく、みかんや梅の産業も実は地形や地質と関係があるんですよ。
え、和歌山県の特産品も、南海トラフに関係あるんですか!?
平地が少なく、険しい山に覆われた紀伊半島で、作物を作るのに適していたのが梅とみかんだったんです。もちろん気候も関係していますが、地質も適していると言われてるんですよ。昔の人は科学的なことは分からなくても、知恵と工夫でたどり着いたんですね。
なるほど、紀南の生活は南海トラフでの沈み込みによって作られたと言っても過言ではないですね。
そうですね、もし噴火が起こってなかったら、侵食して紀伊半島の部分は無くなっていたかもしれません。火山の爆発でできた硬い火成岩があるおかげで紀伊半島が今の形を残しているのかもしれませんね。
なんと、、、噴火がなければ地面すらなかったとは、、、
今後はいろんな景観地を見るのにも、視点が変わってきそうです。
はい!ガイドさんの話を聞きながらジオパークを巡るツアーもありますので、ぜひ楽しんでくださいね!
ぜひ行ってみたいです!福村さんありがとうございました!
紀南地域は南海トラフの恩恵で出来ているという事実に愕きました。「南海トラフ」という言葉だけでなんだか怖いイメージをもっていましたが、イメージが変わりました。今後は地震に注意することはもちろんですが、恵みにも感謝して暮らしていきたいと思います。
今回お話をお聞きした南紀白浜ジオパークセンターは、本州最南端の地、串本町の潮岬にあります。
無料で入場できる施設には、楽しく学べる仕掛けがいっぱい!
小さなお子さんも大人も夢中になることまちがいありません。
ガイドさんも常駐してるので、わからないことはすぐに質問できますよ!