JR串本駅

紀南Good

『最南端にある串本町』だけでは終わらせたくない魅力のあるまち

広い太平洋を行き交う大型船と、大昔の海がつくりだした美しい風景。ここは本州最南端である串本町。想像しただけで気持ちがいい風が吹いていそうなこのまちには何があるのか。私が住むまちは田辺市にあり、近くに住んでいる人達に聞いてみると、「何もないからいつも通り過ぎる場所。」「ダイビングでしか行ったことがないから他はわからない。」と、冷たい反応。果たして何もないのか行ってみると、『最南端にある串本町』だけでは終わらせたくない魅力のある町であることを知りました。

この記事では、公共交通機関で旅行する串本町、2泊3日のモデルコースを案内します。串本町には旅行で訪れておきたい3つのエリアがあります。行程通りに行くとそれなりのハードスケジュールな旅行ですが、全て行くことで串本町の旅行を存分に楽しめる内容が詰まっています。


目次

1日目 最南端の地、潮岬を巡る


2日目 タイムスリップと異国の雰囲気を感じる日


3日目 串本駅から歩いて行ける観光スポットと串本の地魚を堪能する


1日目 最南端の地、潮岬を巡る

公共交通機関で行く串本旅行は、バスの2日間乗車券(2日間乗り放題1000円)が便利です。くしもと観光周遊バスである「まぐトル号」と串本町内を走る「コミュニティバス(全線)」、両方が乗り放題となるためお得です。2日間乗車券はバス内で購入できます。通常の料金だと、「まぐトル号」は1回の乗車で500円、「コミュニティバス」は200円です。

串本駅からまぐトル号に乗り、15分ほどで潮岬(潮岬観光タワー前)に到着します。降りるとそこには、一面広い芝生とその先に見える地平線。その向こうのパプアニューギニアまで海しかない、太平洋の雄大な景色が目の前に広がる絶景スポットです。

「本州最南端の地」モニュメントがある潮岬観光タワー前

潮岬観光タワー/南紀熊野ジオパークセンター前には、本州最南端のモニュメント、一面が芝生の広場、潮岬観光タワー、お食事処、南紀熊野ジオパークセンターがあります。

昼食は飲食店が数店舗ある他、お弁当とレジャーシートを持って芝生で、または潮風の休憩所に持ち込んで食べることも可能です。ごみは持ち帰ってくださいね。

南紀熊野ジオパークセンターは、3種類の地質体が作り出す独特の地形を学ぶことができる施設です。はるか昔、潮岬は島だったといいます。それが、沿岸流である砂州と結ばれて、陸と繋がりました。そのようなことを学んだり、館内を一緒に回ってくださるガイドさんもいます。

南紀熊野ジオパークセンターの真横にある潮岬観光タワー(300円)にのぼると、本州最南端訪問証明書が発行されます。展望台から観る景色は、芝生の先に広がるオーシャンビュー。行き交う大型船のさまざまな形が興味深く、ずっと見ていられます。 

潮岬灯台から潮岬をウォーキング

潮岬観光タワー前のバス停から1km離れたところに潮岬灯台があります。潮岬灯台前までは、バスでの移動がおすすめです。潮岬灯台は見学でき(300円)、「日本の灯台30選」にも選ばれています。

潮岬を一通り堪能し、『潮岬に行ったならば、少し遠回りになっても寄りたい羊羹屋』に行きます。次のバスは3時間近く先となり、時間があるので、潮岬をウォーキング(3.2km)して羊羹屋に向かいます。

歩いている途中にあるカフェで休憩し、潮岬測候所跡を少し見て、大体2時間ほどで次の目的地である羊羹屋に到着するのが理想です。

詳しいウォーキングルートはこちら

明治33年創業の秘伝の羊羹

筍の皮で包まれた羊羹は、一本一本手作りで、口に含んだ時に、蜜の結晶がサクッとした食感を生みだします。

明治33年創業の紅葉屋本舗は、明治から大正にかけて全国で数々の賞を受賞し、旧国鉄で社内販売もされ大変人気でしたが、惜しまれながらも一度閉店しました。

22年前の2001年、家の仏壇から菓子製法を書いた「もみぢや菓子舗」初代のメモが見つかりました。それがきっかけで、当時の羊羹を再現するべく、「紅葉屋本舗」として生まれ変わり再スタート。羊羹は、添加物を使用せず、手作業で8日間かけて仕上げています。

店に入ると試食の羊羹とお茶が出てきました。10年連続モンドセレクションの金賞を受賞している本練りと柚子。柚子は古座川産で地元のものを使っています。潮岬産の桜を使用した桜羊羹。塩に抹茶、そして白あん。一通りの味を試食し味を確かめながら、羊羹を購入することができます。豪華な試食に、とても贅沢な時間でした。

紅葉屋本舗の定休日は毎週水曜日となります。

帰りは、最寄りのバス停「平松」からコミュニティバスで「串本駅」まで帰ります。

「平松」から「串本駅」方面への道は、すぐに車道に入るので、ウォーキングは危険です。もしバスが来る前に串本駅へ帰りたい場合は、タクシーを呼ぶのがおすすめです。

「HOTEL&RESORTS 和歌山 串本」か「大江戸温泉物語 南紀串本」に宿泊する場合、串本駅でまぐトル号に乗り換えると、ホテル前までバスで行くことができます。

串本の潮湯でゆったりと疲れをほぐす

宿泊先に到着し、串本の地で堪能したいものが温泉です。串本に湧く温泉は潮湯といって、塩分を含んだ温泉です。潮湯は古来、病気の治療に利用されていました。宿泊先滞在中は、串本ならではの温泉にゆったり浸かり、日々の疲れを癒す湯治旅を体感してリフレッシュしましょう。

2日目 タイムスリップと異国の雰囲気を感じる日

2日目は江戸時代後期と明治時代の初期にタイムスリップし、3ヵ国の雰囲気を感じることができる大島を旅します。バスの出発時刻(まぐトル号)、HOTEL&RESORTS 8:54発、大江戸温泉物語 8:57発、串本駅 9:05発に乗り、帰りは17時を過ぎます。

毛皮を売りにやってきたアメリカ人、日米修交記念館と海金剛

最初に降車するバス停は「海金剛」。

海を正面にして、すぐ左に日米修交記念館、その奥に海金剛を眺めることができるタカノス園地があり、初めにタカノス園地に向かいます。園地は整備されていて、歩いていった先に、海金剛を眺めるスポットに到着します。これら海金剛の岩は、大昔、マグマがつくった景観美とされています。存在感があるピラミッド型の岩は、「カミトキ岩」という別名があります。昔、この岩で髪をといていた人がいたとか・・・。てっきり「神」かと思っていたら「髪」でした。そんな地元の方の話を聞くのも面白いです。

タカノス園地を巡ったあとは、日米修交記念館に向かいます。日米修交記念館の入館券は、トルコ記念館との入館がセットになった600円で販売されていて、お得です。

日米修交記念館は、江戸時代後期にタイムスリップしたような感覚になります。

ペリーが来航する62年前に、アメリカからレイディ・ワシントン号とグレイス号が、この大島に入港していました。

レイディ・ワシントン号とグレイス号は、ラッコの毛皮の交易目的で、日本の大島にやってきました。当初は、商人の町である大阪の堺を目指していたそうですが、風浪のため押し流されて、大島にたどり着いたとのことです。当時のアメリカ人と大島の住人の間に交流があったことが展示されています。

アメリカからやってきた2隻の船に思いを馳せ、日米修交記念館を出て、バス停の向こう側(お手洗いがある)に奥へ進む道が続いています。

この先にあるのは、レイディ・ワシントン号とグレイス号がやってきたとされる前の浜、そして雷公(なるかみ)神社があります。次のバスまで時間があれば、行ってみるのもおすすめです。

さて、次の行先はコミュニティバスを利用します。コミュニティバスは日米修交記念館前にある「海金剛」とバス停の場所が異なり、「樫野」となります。日米修交記念館から800m、もしくは雷公神社からも直接向かうことができ、850m歩きます。道なりに進むだけのわかりやすい道です。

ユヤノ谷のパン屋さんとポケットパーク

樫野から30分ほどコミュニティバスに乗ってユヤノ谷で降ります。このバス停の前に、パンとカフェの店nagiがあります。「ユヤノ谷」のバス停は、このお店ができてからつくられたバス停だそうです。行列ができる人気のパン屋で、地元のお客さん以外にも県外からも多くの人が集まります。駐車場には車がたくさん並びます。お店の入口が2つあり、手前はパン屋で、奥はカフェになっています。

nagiのカフェでの昼食は人気があります。満席だったら、パンを購入し、歩いて20分ほど先のポケットパークで食べるのもおすすめです。

(※画像右の3つがnagiのパン、左は作っていたおにぎり)

nagiのパンはハード系のパンが多い印象。どれも美味しそうで、大きなパンを持ち帰ってかぶりつきました。直径30㎝くらいある、顔より大きなドーナツ型です。皮はカリッとパリッと、中はふんわりとしたパンです。

nagiから歩いて20分ほど(1.4km先)の場所に、ポケットパークがあります。ここは、くしもと大橋にある休憩所。くしもと大橋と海、串本の特徴的な地形を眺めることができるスポットです。

串本はトンボロと呼ばれる地形になっています。トンボロとは、海を隔てた島が沿岸流の砂州と結ばれ、陸繋島になった地形のことです。北海道の函館と同じ地形で、鹿児島県の里と、串本が日本三大トンボロと呼ばれています。

※ポケットパークに行く場合、バス停は「ユヤノ谷」ではなく、「くしもと大橋」から乗ります。乗り場はくしもと大橋方向ではなく、串本大橋展望台側から乗ります。

大島はバスの通り道であれば、バス停がない場所でも止まってくれるので、道の途中でも乗ることができます。

トルコ記念館とイギリス人のつくった樫野埼灯台

樫野埼灯台は明治3年、イギリス人によってつくられた日本最初の石造灯台です。樫野埼灯台官舎へ入館でき、説明を聞きながら見学することができます。当時のイギリス人仕様でつくられた官舎になっていて、例えば帽子かけが日本人よりかなり背の高い位置に設置されているなど、当時のイギリス人の生活をイメージしながら説明を聞くことができました。

樫野埼灯台がつくられた20年後の明治23年に、横浜からトルコへ帰る途中だった木造の船、エルトゥールル号が、台風に遭遇し、樫野埼灯台付近で座礁しました。

事故が起きたのは夜。1人のトルコ人が、真っ暗な中、必死に泳ぎ、見えていた樫野埼灯台の灯りをたよりに泳ぎました。自分たちの乗った船が事故にあったと助けを求めに来ました。そこから大島の住人たちの救出活動が始まり、69人の命が救われました。座礁したという実際の岩礁は、今も存在していて、トルコ記念館から見ることができます。

3日目 串本駅から歩いて行ける観光スポットと串本の地魚を堪能する

3日目、宿泊先をチェックアウトし、串本駅から歩いて行くことができる橋杭岩を散策します。

バスの2日乗車券は使えませんが、コミュニティバスが走っているので、200円で乗車することができます。

橋杭岩と道の駅橋杭

橋杭岩とは国の名勝・天然記念物に指定されている奇石群です。

岩の1つ1つに名前がついていて、ハサミ岩、コボレ岩、海老島、タコ島などユニークな名前がたくさんあります。

干潮の時間とタイミングが合えば、橋杭岩を歩くことができます。

ただし、注意点として、橋杭岩を歩くならば、滑り止めのついた靴を履いていくのがおすすめです。

歩きやすい靴でいき、滑らないように注意深く歩いても、奥の方まで歩いていくと、少しの油断が足を滑らせる場合があります。(過去に滑ってこけたことがあります。)

打ちどころが悪いと、大けがに繋がりますので十分注意しましょう。

満潮時や橋杭岩が歩けない時は、さまざまな魚が泳いでいるのが見られて、干潮時でなくても楽しむことができます。

ラッキーだったら、エイなど珍しい魚を見ることができます。

そして、橋杭岩のそばにあるのが道の駅橋杭。

串本の土産物がそろっています。

中でも串本のマグロの内臓加工品コーナーが面白いです。

土産物屋の隣に「情報・休憩施設」があり、2階へ上がると橋杭岩を見下ろせるデッキがあるのが魅力的です。

他、串本で昔から栽培されてきたキンカン、サツマイモ(なんたん蜜姫)を使用したソフトクリームは人気があります。串本町の尾鷲牧場牛乳で作ったソフトクリームで、地元ならではの逸品です。

橋杭岩からは、海沿いを散歩するのがおすすめです。

近くに串本海水浴場があり、横切ります。ここからの景色がとてもいい。海を正面にして、右に串本大橋、正面に大島、左に橋杭岩が見えます。進行方向に歩くと、串本駅に到着します。

地魚を心ゆくまで堪能できる松寿司

海のまち、串本。せっかくなので、最南端の、太平洋の海の幸を堪能しませんか?

串本駅から道なりに650m進むと「松寿司」があります。

隣にJA紀南串本支所があり、バス停のすぐ近くにあり、便利がいいです。

串本の、獲れたての地魚を提供してくれるお店。その魚の持ち味を活かして調理してくれる大将。ここでは太平洋の魚の味に舌鼓を打つ。『今まで食べたことがある魚なのに、こんな味だったっけ?』と、思う美味しさ。地元のお客さんが多く訪れる店です。

魚に対する情熱と愛を感じる大将。大将に魚のこと、エビのことを聞いてみてください。串本には面白いカタチをしていて、とても美味しいエビがあります。

お店のオープン時間は昼が11:30から14:00。(夜は17:30から21:00となります。)人気があるお店なので、オープンした11:30頃か、12時までに入るのがおすすめです。電話予約も可能です。

旅の帰り

帰りの電車では、地形上、トンネルに入ることも多いですが、ちらちらと海が見え、和歌山市方面行ならば、すさみ駅あたりまで紀南の海の車窓を楽しむことができます。海を眺めながら、串本旅行の余韻に浸り、心地いいガタンゴトンという音とともに揺られて、うたたねをしたりして帰路につきます。


串本旅行のスケジュール(2泊3日)
 ※緑色部分はウォーキングのコースです


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